昔も今も、暮らしを支える国産塩

塩について学ぶ

塩と健康は
切っても切り離せない関係

“適塩”で健康に!

管理栄養士に聞く!

人類の歴史とともに進化する
“塩”を理解し、「減塩」でなく
「適塩」で、食べることを楽しみながら
元気になろう!

生命維持に大切な塩

今から40億年前に地球の生命は、海の中で誕生し、海の成分を身体に持ちながら陸へ上がってきたのが4億年前と言われます。そのため、血液や体液の成分は海水に極めて近く、人類の体液の食塩濃度は約0.9%で、常に一定に保たれています。海の中で誕生した生命は、海から離れて陸へ上がって生活をすると、海にあった塩が簡単に摂取出来ない環境となってしまいました。そのため、できるだけ塩を身体の中に蓄えようとするシステムが働いたのです。口から食べた塩は必要な分だけ吸収され、腎臓においてはさらに再吸収されて、いらない余分が尿に排泄されます。食塩はいかに排出するかではなく、いかに再吸収するかの方向に働き、とことん身体に蓄えようとする働きが私達の身体の中に備わっているのです。それだけ、塩は私達の生命維持には大切な成分ということです。

文化的な多様性を生み出す
日本食の風味を豊かにする国産塩

日本で購入できる塩には、海水塩や岩塩、湖塩などありますが、国産塩の原料は日本の海水です。日本の製塩工場は衛生管理、異物混入など細心の注意が払われ不純物の残存が極めて少ない安全性に優れた世界最高クラスの品質です。国産塩は日本食に合い風味が良く豊かな味わいを加えることができ、食用として私達の食卓で使用されています。昔から塩は私達の食卓にはなくてはならないもので、「青菜に塩」「手塩にかける」など塩にまつわる故事やことわざも多くあります。塩は身近なものであり、大切さの表れでもあります。そして、日本の食文化は、食材を無駄なく安定的に味わうために塩を上手に使い、食品の保存方法も発展させてきました。塩によって文化的な多様性も生み出してきたのです。

多すぎでも少なすぎでもなく
いい塩梅(あんばい)で適塩を

私達人類にとって生理的に必要な食塩量は1.5g/日と言われています。しかし、健康的かつQOL(生活の質)を考えた場合、食事を美味しく食べることによって心を満たし、ストレスを感じないためには1.5g/日の食塩では到底満足できません。現在の日本人を集団としてみると、食塩摂取目標量として、成人一人当たり男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満と厚生労働省が示しています。日本といっても東北や関東、関西での地域差、さらには個人の嗜好などによって食塩の摂取量は一人ひとり異なります。また、塩の影響を受けやすいタイプ(食塩感受性高血圧)と、そうでないタイプ(食塩非感受性高血圧)があります。その中でも自分の適塩量を知ることはとても重要です。多すぎず、少なすぎず、健康的で、いい塩梅(あんばい)の適塩摂取を心がけ、常日頃から自分の身体との対話を大切にましょう。

海水から作られる
国産塩の良さ

近年、ナトリウムとカリウム比(ナトカリ比)が注目されています。ナトリウム(食塩)とカリウム(野菜・果物)のバランスを示した指標です。カリウムには、体内の食塩の排出を促す作用があり、ナトカリ比が低い食事を心がけようとする取り組みです(腎機能障害が進行してきている場合はカリウムの制限も必要となります)。ナトリウムと同じ量か、それ以上のカリウムを食べることが目標となり、海水から作られた国産塩にはカリウムが含まれます。日本は四方を海に囲まれているため、古来から海水を原料に塩を製造してきました。ひとくちに塩といっても、様々な種類のものがあります。

甘味やうま味を塩で引き出し
美味しい料理を楽しく食べる

塩は、美味しい料理を作るためには、欠かせない調味料です。和食、洋食、中華どれをとっても塩が使われない料理はないと言っていいほど。味を感じ取る5味「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の中に塩がありますが、代用し塩味を付けることはできません。舌にそなわっている味蕾のセンサーは、体液の構成成分であるナトリウムイオンを感じると「おいしい!」と認識されるのです。塩味はさらに味の相互作用が働きます。スイカに塩をかけると甘味を強く感じ、だし汁に味噌を入れて塩味を足すとうま味が引き立つ「対比効果(2種類以上の違った味を混ぜ合わせたときにどちらか一方が強く感じる現象)」が起こります。さらに、酢の物に醤油を加えると酸味がまろやかに感じたりするのは「抑制効果(片方の味が他方に味の強さを弱める働き)」です。日本の食卓は、一汁三菜と言われ、栄養のバランスが良く多くの栄養素を摂取できる健康的な食卓です。美味しい食卓は、身も心も健康に役立ちます。

塩レシピ

塩が入ることで、
甘さが引き立ちます

簡単!
フライパン1つで出来る!!「塩キャラメル」

簡単!フライパン1つで出来る!!「塩キャラメル」
材料
・牛乳200g 
・きび砂糖 150g 
・バター(無塩)80g 
・塩3g
  • 牛乳、きび砂糖、バターを20~25cm程度のテフロンのフライパンにいれて、中火程度で加熱する
  • わいてきたら、弱火にして、なべ底が焦げないようヘラなどで10~15分混ぜる。
  • ねっとりととろみがついてきたら、塩を加える。
  • ボールに水を入れ、③を上から垂らし、散らばらずに固まるかどうか確認する
  • ④をクッキングシートなどの上に広げて、冷蔵庫で冷やす
  • カチカチに固まるちょっと手前で、好みの大きさに包丁で切り分ける。

医療法人社団良知会 共立習志野台病院

管理栄養士 門田 純子

https://www.kyoritsunarasinodai.or.jp/

産婦人科を主体とした総合病院の栄養科で、患者様の食に携わり、病態の改善・治療・治癒に努めるほか、妊産婦や小児期の栄養・食事に関しての指導・相談や生活習慣を見直し、内臓脂肪型肥満の解消の予防・改善のサポートなどを行っている。

【参考文献】
・「食と健康の化学」減塩だけがよいわけではない! 伊藤敬一 BRUE BACKS
・「日本人の食事摂取基準2020」伊藤貞嘉/佐々木敏(監修) 第一出版